エンジニア職種別の年収ランキングとフルスタックの位置
dodaの職種別平均年収では、プロジェクトマネジャーなど上流の職種が上位に並びます。
僕の見方では、フルスタックという肩書が年収交渉の材料になるのは、別の専門性と組み合わせたときです。
エンジニアの年収ランキング上位は上流工程に集まっている
同じdodaの調査で、技術系(IT/通信)21職種の平均年収を見ると、上位3職種と、フルスタックエンジニアが分類されやすい2職種は次のとおりです。
順位 | 職種 | 平均年収 |
|---|
1位 | プロジェクトマネジャー | 707万円 |
2位 | セキュリティコンサルタント/アナリスト | 649万円 |
3位 | プリセールス | 642万円 |
15位 | Webサービスエンジニア | 452万円 |
16位 | SE/プログラマ | 435万円 |
フルスタックエンジニアが分類されやすいWebサービスエンジニアやSE/プログラマは、21職種中15位と16位です。
職種の平均で見る限り、Webサービスエンジニアのまま担当領域を広げても、このゾーンから出にくいと僕は見ています。
案件数から見たフルスタック求人の実情
先ほどのフリーランスボードの調査では、掲載された案件のうちフルスタックエンジニアの案件は3.23%で、職種別の案件数は11位でした。
一方、同じ調査の職種別の平均単価の順位では15位です。
前の節の月79.5万円は高く見えますが、他の職種と比べると上位ではありません。
現実的なのは、決済・認証などの業務領域、パフォーマンス改善、セキュリティといった軸になる専門性を1つ持ち、そこに3層を横断できる力を足す組み合わせです。
専門性で入り口を通り、横断できる力で任される範囲を広げる、という順番になります。
企業規模でフルスタックエンジニアの年収はどう変わるか
大手企業は等級制度と給与テーブルが整っている一方、分業が進んでいるため、3層を横断する機会そのものが限られます。
中小企業やスタートアップでは担当範囲が自然に広がりますが、給与テーブルの上限が低い場合があります。
経験を取りに行く時期と、その経験を年収に換える時期を分けて考えると選びやすくなります。
20代のうちはスタートアップで範囲を広げ、30代で等級制度のある会社に経験を持ち込む、といった順番です。
スキルレベル別に見るフルスタックエンジニアの年収
厚生労働省の調査では、同じ職種でもITSSのレベルが上がるほど、年収の上側が大きく伸びます。
実装を専門にする人と、プロジェクト管理に関わる人の差も、この調査から読めます。
ITSSレベル別の年収レンジ
ITSS(ITスキル標準)は、ITエンジニアのスキルをレベル1〜7で示す指標です。
目安として、レベル2は上位者の指導の下で作業を担当できる段階、レベル3は要求された作業をすべて独力でこなせる段階、レベル4は自分でリーダーとして作業を進められる段階です。
厚生労働省の「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業」報告書(令和6年3月)では、設計・構築の職種について、レベル別の年収の中央50%の範囲(第1〜第3四分位)が次のように示されています。
ITSSレベル | 年収の範囲(第1〜第3四分位) |
|---|
レベル1〜2 | 420万〜620万円 |
レベル3 | 450万〜700万円 |
レベル4 | 500万〜780万円 |
レベル5以上 | 600万〜950万円 |
対象は正社員で、スキルレベルは本人の自己申告、年収は今年度の見込み額です。
レベルが上がるにつれて、範囲の下限は420万円から600万円へ180万円上がるだけですが、上限は620万円から950万円へ330万円開きます。
レベルが上がると、高く払われる可能性の幅が広がる、と読めます。
実装専業では年収の上限が先に来る
同じ調査で、設計・構築の職種のうちソフトウェア開発スペシャリスト(実装を専門にする人)を見ると、レベル5以上でも550万〜866万円です。
設計・構築の職種全体の950万円には届きません。
一方、企画立案・プロジェクト管理の職種では、レベル5以上の第3四分位が1,100万円に達します。
年収を上げることが目的なら、実装できる技術を横に広げる前に、設計の意思決定に関われる立場にいるかを確かめてください。
関われていない場合に現職でできることは、後の「年収を上げる方法」の章で扱います。
フルスタックエンジニアの提示年収を左右する4つの経験

ここからは、求人データには表れない、提示額を決める側の基準です。
統計ではなく、僕が選考で差がつくのを見てきた経験を4つ挙げます。
1. 本番環境まで一人で運んだ経験
設計から実装、本番環境への反映(デプロイ)、障害対応までを一度通した人は、設計の段階で「ここは後で壊れる」と予防的な判断ができます。規模の大小はあまり関係ありません。
面接で僕がよく聞くのは「そのシステムでいちばん怖かったところはどこですか」という質問です。
本番を運んだことがある人からは、小さなサービスでも「決済の二重実行」「深夜に自動で動くバッチ処理が止まったときの復旧」のような具体的な障害の場面が返ってくることがほとんどです。
触っただけの人の答えは、技術名で終わりがちです。
2. 技術選定の理由を言語化できるか
職務経歴書に使用技術を並べても、差はつきません。
分かれ目になるのは、チームの人数、開発期間、想定するアクセス数、運用する人のスキルといった制約から、なぜその技術を選んだのかを説明できるかです。
たとえば「このフレームワークを選んだ理由」を聞いたときに、「流行っていたので」と答える人を、僕は、技術は使えても意思決定の経験はない人だと判断します。
「運用メンバーが触れる言語に合わせて、学習コストを優先した」と答えられれば、制約の中で判断した経験として伝わります。
今の現場でも、次の機能追加のときに候補を2つ挙げ、「人数・期間・アクセス数・運用する人」の4項目で比べたメモを残しておけば、そのまま職務経歴書に書ける材料になります。
3. クラウドと運用の一次経験
サービスの立ち上げで困りやすいのは、監視、ログの設計、権限の分離(誰がどのデータや設定に触れられるかを分けること)、クラウドの費用の見積もりを決められる人がいないことです。
僕が選考で見てきた範囲では、フロントとバックの両方を書ける人は一定数いますが、監視と費用の視点を持ち込める人は多くありません。
僕が選考する側なら、この視点を持つ人は提示レンジの上のほうで検討します。
バックエンドの経験者が次に広げるなら、フロントより先に、自分のアプリをクラウドに載せて監視と月額費用まで自分で持つことをおすすめします。
自分で作ったサービスでも、アラートの設定や月額費用の見直しをした経験は、面接で一次経験として話せます。
4. 生成AIが書いたコードを判断する力
生成AIを使えば、経験の浅い人でもコードを書く速度は大きく上がります。
そのぶん価値が残るのは、AIが書いたコードのリスクを見つけ、本番に出してよいかを判断する力です。
AIが出したコードを取り込む前に、データの整合性、権限のチェック、例外処理の抜けの3点を確認し、その結果をプルリクエスト(変更内容のレビュー依頼)に書く習慣をつけてみてください。
その判断の記録が、そのまま評価の材料になります。
評価されにくい経験
評価されにくいのは、担当した領域の名前だけが並び、何を判断したかが書かれていない職務経歴書です。
僕が面接で掘り下げると「触ったことがある」水準にとどまることが多く、提示額は伸びません。
3つの層を薄く書くより、1つの層で「どの制約の下で何を選び、結果どうなったか」を語れる人のほうが、僕なら高く評価します。
経験年数とフルスタックエンジニアの年収レンジの対応
job tagでは、システムエンジニア(受託開発)の成長の目安として、3年目で詳細設計、5年目で基本設計を含む開発全体を担当できるようになると説明されています。
これを求人の提示レンジと突き合わせると、実務3年前後で500万〜600万円台、クラウドの構築と要件定義への関与が加わると700万円台以上が視野に入る、というのが僕の見立てです。
統計が直接示した数字ではなく、採用側としての推測である点は差し引いて読んでください。
フルスタックエンジニアの需要と将来性
「IT人材は不足している」という言葉だけでは、どんな人材が求められているのかは分かりません。
ここでは、企業がフルスタックエンジニアを採りたい理由と、公的な推計が示す需要の中身を見ていきます。
企業がフルスタックエンジニアを求める理由
僕は、企業がフルスタックエンジニアを採りたい一番の理由は、調整にかかる時間を減らすことだと考えています。
たとえば新規事業の検証では、画面の修正、APIの追加、データベースの変更が1日のうちに何度も発生します。
1人で判断して反映できれば、仮説を試すサイクルを速く回せます。
フルスタックエンジニアには「器用貧乏」という批判もありますが、それが当たるのは、どの領域でも自分で判断した経験がない場合です。
IT人材不足のデータが示す根拠
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(2019年)は、2030年にIT人材が中位の試算で約45万人、高位の試算で約79万人不足するとしています。
ただし前提によって結果が変わる推計で、従来型のIT人材から先端IT人材への転換が進まない場合には、従来型のIT人材は約10万人余るという試算も示されています。
2026年に公表された経済産業省の「2040年の就業構造推計(改訂版)」では、国内投資や産業構造の転換が進んだ場合でも、AI・ロボット等の利活用を担う人材が2040年に約340万人不足する可能性があるとされています(IT人材とは定義が異なる推計です)。
どちらの推計でも不足が大きいのは、新しい技術を扱う側の人材です。
僕はこれを、フルスタックエンジニアで言えば、3層を書けることより、AIが書いたコードや構成を本番に出してよいか判断できる人の需要だと読んでいます。
未経験からフルスタックエンジニアになるには
未経験からフルスタックエンジニアになることはできますが、順番を間違えると遠回りになります。
インフラまで任される状態になるには、学習期間の1年前後に加えて、実務で3〜5年というのが僕の見立てです。
学習は1つの領域から始める
フロントエンド・バックエンド・インフラの3層を並行して学ぶと、どの領域も「自分で動くものを作れる」水準に届きません。
まずバックエンドかフロントエンドのどちらかで一本足を作ってください。
画面を作るのが好きならフロントエンド、データの扱いや仕組みに興味があるならバックエンド、という選び方で十分です。
一本足ができると、データが画面からサーバーへ、サーバーからデータベースへどう流れるかという骨格が頭に入ります。
この骨格があると、もう一方の領域を学ぶ速度が大きく上がります。
最初の1年で作るべきもの
未経験の方の選考で僕が評価するのは、公開されて実際に動いているものです。目安になるのは次の3つの条件です。
- 本番環境にデプロイされていて、URLからアクセスできる
- 自分以外の人が使える状態になっている
- エラーやアクセスのログを確認できる
作ったサービスを半年ほど稼働させ続けると、ライブラリの更新、証明書の期限切れ、アクセスの増加などで、障害対応や運用の経験が発生します。
この経験が、「提示年収を左右する4つの経験」の章で説明した「本番環境まで一人で運んだ経験」の最初の一歩になります。
フルスタックエンジニアに役立つ資格
フルスタックエンジニアに必須の資格はありません。
job tagでも、入職にあたって特に学歴や資格は必要とされないとされています(ただし大卒や大学院卒が多いとも書かれています)。
役に立つ資格はあります。
基本情報技術者試験や応用情報技術者試験は、未経験のときに基礎知識があることを書類で示す材料になります。
AWSなどのクラウドの認定資格は、学ぶ過程で設計の考え方が身につき、実務での判断に直接つながります。
学習の順序設計を外部に委ねるという選択肢もある
独学で一番難しいのは、何をどの順序で学ぶかを決めることと、自分が今どこまで到達しているかを把握することです。
この2つを外部に任せるのも1つの方法です。
僕が代表を務めるSiiDでは、1年以内のゴールから逆算して学ぶ範囲を絞り、毎日21〜23時のZoomとDiscordのチャットで講師に進み具合を見てもらいながら学習を進めます。
給付金の条件を満たせば、実質負担は105,600円からです。
フルスタックエンジニアが年収を上げる方法とキャリアパス

ここまでのデータで年収差が大きかったのは、設計や管理の判断に関わっているかどうかでした。
以下の4つは、その判断に近づくための方法です。
1. 上流工程に関与する
現職のままでもできることがあります。
要件を決める打ち合わせに同席する、技術選定の比較資料を作る、見積もりの根拠を書く、といった仕事です。
肩書が変わらなくても、自分が判断に関わった記録は職務経歴書に書けます。
次の転職で提示額が動くのは、この記録があるときです。
2. 転職するときに見る企業の立ち位置
発注元の企業から直接仕事を受ける会社(エンド直取引)と、元請けからさらに仕事を受ける二次請け・三次請けの会社では、同じ作業でも1人あたりの売上単価が違います。
人件費の原資が違うので、入社時の提示年収が同じ水準でも、その後の昇給の余地に差が出ます。
求人票だけでは分からないので、面接で主な取引先と契約の形を聞いておくと判断しやすくなります。
3. フリーランスとして独立するには
フリーランスで高い単価が成立する前提は2つあります。
要件定義から運用までを1人で引き受けられる状態であることと、案件を切らさない営業の経路があることです。
僕は、実務3年未満で独立すると、低単価の案件で稼働が埋まり、学習に使う時間を失いやすいと考えています。
会社員のうちに上流工程の経験を積んでから独立するほうが、単価の交渉もしやすくなります。
4. 管理職とスペシャリストのどちらを選択するか
プロジェクトマネジャーの方向に進むと、職種別ランキングで見たとおり平均年収は707万円と高く、スキルレベルをそろえた比較でも、企画立案・プロジェクト管理の職種は上側が1,100万円に達します。
3層の全体像を把握している強みも活きます。
専門領域を深めるスペシャリストの方向では、3層を理解しているぶん、たとえばセキュリティやクラウド設計に移ったときに、画面からインフラまでの影響範囲をすぐに見積もれます。
フルスタックエンジニアの年収に関するよくある質問
未経験から何年でフルスタックエンジニアになれますか
job tagでは、SEとして働き始めてから3年目頃に詳細設計、5年目頃に基本設計を含む開発全体を担当できるようになるとされています。
インフラまで任される状態は、この延長で実務3〜5年というのが僕の見立てです。
学習期間を含めると、さらに1年前後を見ておいてください。
フルスタックエンジニアで年収1,000万円は可能ですか
可能ですが、上位の層です。
前述の厚生労働省の調査では、設計・構築の職種でITSSレベル5以上の人のうち、上位4分の1が年収950万円を超えています。
企画立案・プロジェクト管理の職種では、同じ位置の値が1,100万円です。
フリーランスで単価から到達する道もありますが、稼働しない期間と経費を差し引いた実質の額で考えてください。
フルスタックエンジニアの志望動機はどう書けばよいですか
「幅広い技術を身につけたい」という書き方は、何を判断できる人なのかが読み取れず、評価しにくくなります。
過去に自分で決めた経験と、次に決められるようになりたい範囲を書くと、具体性が出ます。
「小規模なサービスでインフラの費用設計を担当した。次は要件定義から関わりたい」といった書き方です。
フルスタックエンジニアを目指すならSiiDの個別説明会へ
フルスタックエンジニアの年収は幅が広く、その幅のどこに入るかには、設計や管理の判断にどこまで関わっているかが大きく影響します。
採用側として僕が提示額に差がつくのを見てきたのは、本番環境まで一人で運んだ経験、技術選定の理由を言語化する力、クラウドと運用の一次経験、生成AIが書いたコードを判断する力の4つです。
すでに実務経験のある方は、この4つのうち今の現場で積めるものから始めてください。
SiiDは、合同会社BugFixが運営するスクールです。
未経験からエンジニアを目指している方は、SiiDの個別説明会で、SiiDで何を学べるか、今の経歴で目指せるか、仕事と両立して学習を続けられるか、給付金の対象になるかを確認できます。
AIプログラミングスクール「SiiD」について
AIプログラミングスクール「SiiD」は、未経験からITエンジニア転職を目指す方向けのオンラインスクールです。
SiiDの特徴
- 現役エンジニアでYouTube登録者約13万人の「セイト先生」が代表兼主任講師
- 採用側の実務知見(2,000人以上の選考・150名以上のエンジニア採用)にもとづく指導
- 生成AIを取り入れた学習設計と、実務レベルのフルスタックWeb開発スキル
- Workship CAREER(株式会社GIG)と連携した無料の転職伴走支援
- 経済産業省認定のReスキル講座で、給付金の条件を満たせば実質105,600円〜
- 学割あり(35%オフ)
こんな方におすすめ
- 未経験・文系・社会人からITエンジニア転職を本気で目指したい方
- 独学に限界を感じている方
- 費用を抑えながら実務スキルと転職サポートを両立したい方
「未経験だから」とあきらめる必要はありません。採用する側を知り尽くしたプロが、給付金で負担を抑えながら内定まで伴走します。