外からは結果だけで評価される仕事ほど、AIで意義が薄れる AIで揺れているのは数学だけではありません。 AIの性能が上がるたびに、ハリウッドの俳優がストライキをしたり、イラストレーターや声優が声を上げたりしてきました。そして今回が、数学です。
これらの仕事に共通するのは、アウトプット(出来上がったもの)だけで評価されやすいことだと思います。
数学者自身にとっては、解く過程こそが仕事の中身です。 でも外から見れば、極端な話、問題が解けて証明が再現できればそれでいい。 誰が解いたか、どうやって解いたかは、結果には関係ありません。 しかも、解いた結果を世の中でどう使えるようにするかまでは、数学者の仕事に含まれていません。
シンプルだけど崇高な仕事です。 こういう仕事は、これまでAIにはできませんでした。 でも、AIにできると分かった瞬間に「AIでやればいいじゃん」に変わってしまいます。人間がやる意義が薄れてしまうのです。
エンジニアの仕事の本質は「技術を世の中に使える形で届けること」 AIが数学の難問を解いたというニュースへのXでの反応を見ていると、エンジニアの間では賛否が分かれていました。 数学者に共感する投稿がある一方で、「AIで難問が解けるなら、数学をもっと発展させられる。新しい時代だ」と前向きに読む投稿も少なくありませんでした。気持ちはわかります。ただ、少しずれていると僕は感じました。
エンジニアの仕事の本質は、技術を世の中に使える形で届けることです。 エンジニアリングという言葉の定義そのままですが、技術を生み出すことよりも、社会に還元する・導入する・実装することが中心にあります。
もちろん、高度なアルゴリズムや新しい技術を作るエンジニアもいますし、その仕事も大事です。 ただ、技術を作るのは途中の段階で、最終ゴールではありません。 社会に導入して、人に使ってもらえたときに、はじめて価値が生まれます。
人はそれぞれ、背景も仕事も能力も違います。 ChatGPTのようなものを作っただけでは、みんながそれで仕事を回せるようにはなりません。
AI企業がFDEを募集している理由 OpenAIやAnthropicは、FDE(Forward Deployed Engineer)という職種を募集しています。 お客さんの企業に入り込み、現場の背景を理解して、その会社がAIを仕事に使えるようにする職種です。 試作から本番運用まで作り込み、現場で得た気づきを自社に持ち帰って、AIの製品そのものの改良にもつなげます。 Anthropicの募集要項には「最重要顧客のもとに入り込み、顧客のシステムの中でClaudeを使った本番アプリを作る」とあります。
技術を作って終わりではなく、使える形に調整する人が要る。 AIを作った会社自身がそう考えているわけです。
アプリを作る。使いやすさ(UX)を考える。 ユーザーの声を聞いて、プログラムに反映する。 これがエンジニアの仕事です。
だからエンジニアは、新しい技術が出ると歓迎しがちです。 僕の見ている範囲でも、技術をよく理解しているエンジニアほど「AIを今の仕事にどう使うか」「お客さんの課題をAIでどう解くか」に考えを切り替えて、AIを乗りこなしています。
「AIでエンジニアはいらなくなる」は毎回外れてきた エンジニアの仕事がなくなる、という話は、AIが出てくる前からほぼ毎年のように言われてきました。
ローコード ローコードは、少しだけコードを書けば、部品を組み合わせて業務アプリを作れる開発ツールの総称です。2010年代に広まりました。 出てきたときは「プログラマーはいらなくなる」と言われました。
実際には、楽になったぶん、より多くの開発ができるようになりました。 月に10個しか出せなかった機能が20個出せるなら、もっと出そう、と会社は考えます。 エンジニアの仕事は減るどころか増えました。
ノーコード ノーコードは、コードを1行も書かずにアプリやWebサイトを作れるツールです。 コードを書かずにWebアプリを作れるBubbleや、デザインさえあればWebサイトを作れるStudioが代表例です。 これも出たときは「エンジニアの仕事がなくなる」と言われましたが、なくなりませんでした。
ざっくり言うと、ノーコードはエンジニアが作るより品質は70点くらい、コストは1,000分の1くらい、というイメージです。 100点のアプリが欲しいなら、やはりエンジニアに作ってもらうことになります。 その代わり、個人でちょっとしたアプリを作ったり、試作品を作ったりするのに向いています。
企業にとっても、当たるか分からないサービスにお金をかけて外すと、赤字がきつい。 ノーコードで安く速く試作品を10個作り、9個外れても1個当たったら、そこにお金を入れてエンジニアに本番のプロダクトを作ってもらう。 こうして、エンジニアの需要は続きましたし、新しい事業も試しやすくなりました。
ジェヴォンズのパラドックス こういう現象には名前があります。ジェヴォンズのパラドックスです。 1865年、経済学者のジェヴォンズは、蒸気機関の改良で石炭を効率よく使えるようになったのに、イギリス全体の石炭の消費量は逆に増えたことを指摘しました。 安く使えるようになると、使い道が一気に広がるからです。
本来は資源の話ですが、エンジニアの仕事でも同じことが起きてきました。 作るのが安く速くなると「それならこれも作りたい」が増えて、仕事は減らずに増えてきたのです。 マイクロソフトのCEOサティア・ナデラさんも、2025年1月に「ジェヴォンズのパラドックスがまた起きる」とXに投稿しています。 AIが効率よく安くなるほど、AIの利用は急増する、という趣旨です。
AIでも、今のところ同じ構図が起きている 2010年代後半から、デジタル技術で業務やビジネスのやり方を変えるDXが、コンサルやSIer(企業のシステム開発を請け負う会社)を中心に広がってきました。 僕が見ている範囲では、そこへAIが加わったことで、「DXをやりたいけど、今の仕事のやり方を変えるのは面倒」と止まっていた会社が、導入が簡単で、しかも安くなるなら試してみよう、と動き始めています。
新規事業も同じです。 月1,000万円の投資は難しいけど、100万円なら出せる。 AIとエンジニア1〜2人で始めてみよう、と考えやすくなりました。 代表的なのがDeNAで、2025年2月に当時会長だった南場智子さん(現在は社長兼CEO)が「AIにオールインする」と宣言し、新規事業づくりに力を入れています。
新しい技術が出たら、それを使って新しい市場を作り、新しいやり方を考える。それがまたエンジニアの仕事になります。 だから、日ごろから学んでいて技術への理解が深いエンジニアほど、「自分の仕事がなくなる」という発想になりにくい。 仕事がなくなるというより、変化するという感覚です。
「AIで数学も発展する」という読み方は、この発想を数学に当てはめたものです。
AIを乗りこなせない業界には、規制と支援が必要 ただ、数学のように、AIを乗りこなすというやり方が通用しない業界や仕事は、たくさんあります。 そういう業界では、人がやる意義が一気に薄れてしまいます。
ここからは声明の内容ではなく、僕の意見です。 僕は、そういう業界のために、政府などが一定の規制を入れたり、その分野で活躍する人を支えたりすることが必要だと思います。 いろいろな業界で、AIができるようになって人がいなくてもよくなる、ということはこれからも起きます。 そのときに何の手当てもないと、その分野を目指す人がいなくなり、業界はそれ以上発展しなくなるからです。
AIが数学の未解決問題を解けるのは、これまでの数学者たちが積み上げてきたデータがあるからです。データがあるだけでも解けません。 AIと数学の両方に詳しい人が、どう学習させ、どう評価するかを調整し、正しいフィードバックを繰り返してきた結果が今です。 仮に20〜30年後、数学者を目指す若者がほとんどいなくなったら、AIが問題を解き続けても、その答えが正しいかを確かめられる人がいなくなります。
答えが正しいかを確かめることの難しさは、すでに表に出ています。 OpenAIのナビエ–ストークス方程式の証明について、10月6日に「コンピュータ上の証明と論文の中身がずれている」と指摘する論文が出ました。 OpenAIの発表から1か月たっても、証明を完全に理解している人はいないと報じられています。
答えを出すのがAIでも、それが正しいかを確かめるのは人間の専門家です。 だから、規制や支援といった政治的な介入がないと、人間もAIもそれ以上は発展しないのではないかと僕は考えています。
エンジニアもAI時代は学び続けなければ淘汰される ここまでエンジニアに前向きな話をしてきましたが、エンジニアは乗りこなす側だから安心、とも言いません。 乗りこなすには、学び続けて新しい技術に追いつき、市場の変化に合わせて自分も変わっていく必要があるからです。
学ぶことをやめたり、古い技術ややり方にこだわったりするエンジニアは、どうしても淘汰されます。 学び、適応し続けられる人にだけチャンスがある世界です。
それでも、数学のように学び続ける意思があっても人がやる意義そのものが薄れてしまう分野に比べると、エンジニアは学んで適応さえすればチャンスがあります。 かなり恵まれた位置にいると、僕は思います。
SiiD公式LINEで「年収1,000万円超エンジニアが毎日チェックする情報サイトと学習習慣20選」を無料配布中 学び続けているエンジニアが、ふだん何を見て、どう学んでいるかをまとめた資料です。SiiDの公式LINE に登録すると、そのまま受け取れます。
AIとエンジニアの仕事に関する出典 AIプログラミングスクール「SiiD」について AIプログラミングスクール「SiiD」は、未経験からITエンジニア転職を目指す方向けのオンラインスクールです。
SiiDの特徴
現役エンジニアでYouTube登録者約13万人の「セイト先生」が代表兼主任講師 採用側の実務知見(2,000人以上の選考・150名以上のエンジニア採用)にもとづく指導 生成AIを取り入れた学習設計と、実務レベルのフルスタックWeb開発スキル Workship CAREER(株式会社GIG)と連携した無料の転職伴走支援 経済産業省認定のReスキル講座で、給付金の条件を満たせば実質105,600円〜 学割あり(35%オフ) こんな方におすすめ
未経験・文系・社会人からITエンジニア転職を本気で目指したい方 独学に限界を感じている方 費用を抑えながら実務スキルと転職サポートを両立したい方 「未経験だから」とあきらめる必要はありません。採用する側を知り尽くしたプロが、給付金で負担を抑えながら内定まで伴走します。